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はじめに
「顧客満足度(CS)を高めるためには、従業員満足度(ES)を高める」
これは、現在では広く知られている言葉です。
この論点に対して、これまでにも数々の研究や報告がなされています。
今回は、ESとCSの関係性のメカニズムなど、これまでの研究や報告についてまとめます。
ESとCSは表裏一体の関係(サティスファクション・ミラー)
「サティスファクション・ミラー」は、ベンジャミン・シュナイダーとデービット・ボウエンによって、
発見された理論で、和訳すると「満足度の鏡」となります。
従業員の満足と顧客の満足には密接な関係があり、顧客満足度の情報を従業員にどの程度与えられるかによって、従業員の満足度は決まるというものです。
また、「カスタマー・ロイヤルティ経営(ジェームス・L・ヘスケット他著 日本経済新聞社 1998年2月)」において、ESとCSのどちらか一方のデータだけでも、もう片方の満足度を推定できるとの研究結果も報告されています。
<サティスファクション・ミラー>
出所:ジェームス・L・ヘスケット他著「カスタマー・ロイヤルティ経営 P131」に加筆修正
ESとCSには因果関係がある
顧客満足についての権威であるジェームス・L・ヘスケット氏の著書「カスタマー・ロイヤルティの経営」(日本経済新聞社)では、
・従業員満足度と顧客満足度との間には99%の因果関係がある
・従業員満足度が1%増加すると、顧客満足度が0.22%増加する
との調査結果があり、従業員満足を向上させることは、顧客満足や業績の向上につながると言えます。
また、顧客満足と企業利益の因果関係を示した「サービス・プロフィット・チェーン」という概念があります。
サービス・プロフィット・チェーンでは、
●社内サービスの質が向上することで従業員満足が高まり、定着率・生産性の向上が期待される
↓
●その結果、顧客サービスの質も向上し、顧客満足も向上し、顧客ロイヤルティも高まる
↓
●最終的に、売上・利益率が向上する
↓
●売上・利益が向上したことで、社内サービスもさらに向上していく
という連鎖構造が示されています。(下図)
<サービス・プロフィット・チェーン>
出所:「いかに「サービス」を収益化するか(Harvard Business Review Anthology)中「サービスの高収益モデルの作り方」」を元に一部加筆修正
上図から「従業員満足」が、顧客満足の向上や企業の業績向上において、いかに重要な位置づけであるかがわかります。
中小企業におけるESとCSの関係調査結果
社団法人 中小企業診断協会 香川県支部による「従業員満足度向上プログラム実態調査報告書」では、以下の事項が報告されています。(参考URL:https://www.j-smeca.jp/attach/kenkyu/shibu/h19/h_kagawa.pdf)
従業員満足度(ES)が低い場合に顧客満足度(CS)に与える影響
<従業員満足度は低い場合に発生する問題点>
① 業務に取り組む意欲が低下する
② 個々の従業員のスキルアップが見込めない
③ 従業員の企業への定着率が低下する
④ 部署・チーム内のチームワークが低下する
⑤ 企業理念、経営方針が浸透しない
<上記の問題点が発生した場合に顧客満足度に与える影響>
① サービス開発力・提案力が低下する
② 顧客へ提案するサービス内容・質がマンネリ化する
③ 担当者が頻繁に交代し、十分なサービスが提供できない
④ 担当者によって顧客への応対にバラツキが出る
⑤ 企業としての姿勢が不明瞭で、顧客から社内体制に対する不信感を抱かれる
従業員満足度(ES)の向上が顧客満足度(CS)に与える影響
<従業員満足度が向上による期待効果>
●業務に対する意欲が向上する
●個々の従業員の能力が向上する
●従業員の定着率が向上する
●企業内のチームワークが向上する
●経営理念や事業計画などが従業員レベルにまで行きわたる
<上記効果によって得られる顧客の信頼感>
●企業と社内体制への信頼感
●サービスの内容、質への信頼感
●企業としての一元化された方向性への信頼感
●顧客と従業員を大切にする姿勢に対する信頼感
最後に
様々な調査結果から、ESとCSには因果関係があり、「ESが高い→CSが高い→業績(売上・利益)向上」と言った連鎖構造になっています。
CSを高めたいのであれば、ESを高める必要があり、ESがCSの先行指標であることがわかります。
ESがCSの先行指標であるからこそ、ES調査を実施して、現状を把握することがES向上に向けた出発点となります。
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