この記事を読むのに必要な時間は約 6 分です。

はじめに

「顧客満足度(CS)を高めるためには、従業員満足度(ES)を高める」

これは、現在では広く知られている言葉です。

この論点に対して、これまでにも数々の研究や報告がなされています。
今回は、ESとCSの関係性のメカニズムなど、これまでの研究や報告についてまとめます。

ESとCSは表裏一体の関係(サティスファクション・ミラー)

「サティスファクション・ミラー」は、ベンジャミン・シュナイダーとデービット・ボウエンによって、
発見された理論で、和訳すると「満足度の鏡」となります。

従業員の満足と顧客の満足には密接な関係があり、顧客満足度の情報を従業員にどの程度与えられるかによって、従業員の満足度は決まるというものです。
また、「カスタマー・ロイヤルティ経営(ジェームス・L・ヘスケット他著 日本経済新聞社 1998年2月)」において、ESとCSのどちらか一方のデータだけでも、もう片方の満足度を推定できるとの研究結果も報告されています。

<サティスファクション・ミラー>

サティスファクション・ミラー

出所:ジェームス・L・ヘスケット他著「カスタマー・ロイヤルティ経営 P131」に加筆修正

ESとCSには因果関係がある

顧客満足についての権威であるジェームス・L・ヘスケット氏の著書「カスタマー・ロイヤルティの経営」(日本経済新聞社)では、

 ・従業員満足度と顧客満足度との間には99%の因果関係がある
 ・従業員満足度が1%増加すると、顧客満足度が0.22%増加する

との調査結果があり、従業員満足を向上させることは、顧客満足や業績の向上につながると言えます。

また、顧客満足と企業利益の因果関係を示した「サービス・プロフィット・チェーン」という概念があります。

サービス・プロフィット・チェーンでは、

 ●社内サービスの質が向上することで従業員満足が高まり、定着率・生産性の向上が期待される
  ↓
 ●その結果、顧客サービスの質も向上し、顧客満足も向上し、顧客ロイヤルティも高まる
  ↓
 ●最終的に、売上・利益率が向上する
  ↓
 ●売上・利益が向上したことで、社内サービスもさらに向上していく

という連鎖構造が示されています。(下図)

<サービス・プロフィット・チェーン>

サービス・プロフィット・チェーン


出所:「いかに「サービス」を収益化するか(Harvard Business Review Anthology)中「サービスの高収益モデルの作り方」」を元に一部加筆修正

上図から「従業員満足」が、顧客満足の向上や企業の業績向上において、いかに重要な位置づけであるかがわかります。

中小企業におけるESとCSの関係調査結果

社団法人 中小企業診断協会 香川県支部による「従業員満足度向上プログラム実態調査報告書」では、以下の事項が報告されています。(参考URL:https://www.j-smeca.jp/attach/kenkyu/shibu/h19/h_kagawa.pdf)

従業員満足度(ES)が低い場合に顧客満足度(CS)に与える影響

<従業員満足度は低い場合に発生する問題点>

 ① 業務に取り組む意欲が低下する
 ② 個々の従業員のスキルアップが見込めない
 ③ 従業員の企業への定着率が低下する
 ④ 部署・チーム内のチームワークが低下する
 ⑤ 企業理念、経営方針が浸透しない

<上記の問題点が発生した場合に顧客満足度に与える影響>

 ① サービス開発力・提案力が低下する
 ② 顧客へ提案するサービス内容・質がマンネリ化する
 ③ 担当者が頻繁に交代し、十分なサービスが提供できない
 ④ 担当者によって顧客への応対にバラツキが出る
 ⑤ 企業としての姿勢が不明瞭で、顧客から社内体制に対する不信感を抱かれる

従業員満足度(ES)の向上が顧客満足度(CS)に与える影響

<従業員満足度が向上による期待効果>

 ●業務に対する意欲が向上する
 ●個々の従業員の能力が向上する
 ●従業員の定着率が向上する
 ●企業内のチームワークが向上する
 ●経営理念や事業計画などが従業員レベルにまで行きわたる

<上記効果によって得られる顧客の信頼感>

 ●企業と社内体制への信頼感
 ●サービスの内容、質への信頼感
 ●企業としての一元化された方向性への信頼感
 ●顧客と従業員を大切にする姿勢に対する信頼感

最後に

様々な調査結果から、ESとCSには因果関係があり、「ESが高い→CSが高い→業績(売上・利益)向上」と言った連鎖構造になっています。

CSを高めたいのであれば、ESを高める必要があり、ESがCSの先行指標であることがわかります。

ESがCSの先行指標であるからこそ、ES調査を実施して、現状を把握することがES向上に向けた出発点となります。

詳しく知りたい・ES調査を検討したいという方はお気軽にこちらよりお問い合わせください。

無料相談受付中
050-3154-1038
受付時間 平日10:00 – 19:00