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はじめに

従業員満足度調査(以下、ES調査)は、本来、モチベーション向上やチーム力向上などを目的に、組織の現状把握、課題可視化の手段として実施されます。調査結果に基づき組織課題が改善され、当初の目的が達成されなかったり、調査そのものが形骸化してしまっているケースが散見しています。
「ES調査がなぜうまくいかないのか」は、主に以下が考えられます。

 ①普段から従業員の状態に関心があまりない
 ②調査目的が不明確
 ③アンケートの精度が低い
 ④課題解決の優先順位が不明確
 ⑤ES調査結果を全従業員にフィードバックしていない

そこで、本記事では、上記①~⑤の詳細と、「どうすればうまくいくのか」について詳しく述べていきます。

【原因1】普段から従業員の状態に関心があまりない

普段、職場や従業員の状態に対してあまり関心がない、経営層やリーダーが、「従業員満足度を高めれば、離職率も低下し、優秀な人材も確保でき、業績も上がるだろうから、先ずは、ES調査をしてみよう」といったケースです。

当社でもES調査サービスをご提供しており、当該Webページの冒頭で、「ESが向上すれば、CS(顧客満足)が向上し、業績向上に繋がる」と記載しています。

サービス提供者の立場であるものの、「普段から職場や従業員の状態に対してあまり関心がない」状態では、調査をしたところで、本当に従業員にとって会社にとって有意義な調査になるとは思えないのが本音です。

前述の「ESが向上すれば、CS(顧客満足)が向上し、業績向上に繋がる」と言った研究結果に触発・左右されることなく、職場や従業員の状態に対して強い関心を持つことの方が先決だと思います。 その後で調査実施について検討されても遅くないと思います。

【原因2】調査目的が不明確

ES調査を実施する目的が不明確の場合があります。目的が不明確の場合、単に従業員の考えや思いを把握できたとしても、その改善策を検討出来なかったり、局所的な改善策になってしまう危険性があります。
 ・生産性を上げてコストを削減したい
 ・モチベーションを上げて売上を伸ばしたい
など、「従業員満足度を向上させ、何を実現したいのか」を明確化することが最初にすべきことであり、目的が決まっているからこそ、そのギャップを埋めるための有効な改善策の検討が可能になります。

また、何のために調査をしているのかということを、従業員としっかりと共有することも重要です。目的や実施者(会社側)の本気度が伝わっていないと、従業員から本音が聞き出せなく可能性があります。 さらには、従業員を目的を共有する際には、調査結果や改善計画の報告などの調査後の取組みについても共有する方が、会社の本気度も伝わりやすいと思います。

【原因3】アンケートの精度が低い

①ESの構成要素が網羅されていない

ES調査を外部委託する場合には、網羅性の高い調査項目構成になっていることが多いですが、自社内のみで実施する場合には、項目のモレが発生してしまうことが考えられます。モレが発生してしまうと、部分的・局所的な従業員満足度しか把握できなくなってしまいます。

従業員満足度の構成要素を考察する上で、ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論(二因子理論)」が有名です。従業員満足度の構成する要因は「動機づけ要因」と「衛生要因」の二因子から成ると言った理論です。

動機づけ要因とは、何らかの刺激を与えるとやりがいを持って仕事をするようになる、やる気に比例するもので、「仕事そのもの」「承認」「自身の成長」「昇進や責任」などが相当します。一方、衛生要因は基本的にあって当たり前のもので、あっても満足はせず、ないと不満になるもので、「労働環境」「給与」「福利厚生」「対人関係」などが相当します。

従業員満足を構成する要素が、「動機づけ要因」「衛生要因」の面で、バランスよく網羅されているか、再検討する必要があります。

②あいまいな表現の質問項目がある

調査項目の質問文に、
 ・あなたは、自分の仕事にやりがいを感じていますか。
 ・あなたの職場は、一体感が強い職場だと思いますか。
 ・あなたは仕事上、職場の上司を信頼していますか。
といった質問文があったりします。

これらは、比較的回答しやすい質問文ですが、
「仕事にやりがい」「一体感」「上司への信頼」は、非常にあいまいなため、調査後に実施する分析や改善案の検討がしづらいものになってしまいます。よって、分析以降のフェーズを意識した質問項目(質問文)の設計が重要になります。

「あなたは、自分の仕事にやりがいを感じていますか。」と例にとると、
「仕事のやりがい」を
 ・仕事の重要感の程度
 ・自己決定権の程度
 ・仕事全体の流れへの関わりの程度
 ・多様な技能の活用程度
 ・貢献・有能性の実感
といった、ハックマンとオルダムによって提唱された「職務特性モデル」を用いて細分化して質問したり、「具体的にはどこでどのような時に感じるか」をフリーコメントとして記載してもらうことで、仕事のやりがいの中でも具体的にどこで感じているか、感じていないかが明確になります。

【原因4】課題解決の優先順位が不明確

ES調査のみならず、各種アンケート調査では、平均値や度数分布などで分析結果を示すことが多くあります。筆者も駆け出しのころ、恥ずかしながら、「平均値の低い項目が重要課題だ」などと、安易に考えていた時期がありました。

このような事態に陥ってしまうのは、改善対象となる項目には当然優先順位があり、その優先順位を明らかにするような分析手法が採用されていないことが原因です。

このようなことを解決する分析手法として、以下のような手法が挙げられます。

・「総合的に考えて、あなたは、現在の仕事・職場・会社に対してどの程度満足していますか。」のような「総合満足度」を問う質問と各質問との相関性を分析して、優先順位付けをする方法。

・各項目に対して「満足度」と「重要度」の両面で質問し、「満足度が低く、重要度が高い項目」を重要課題をする方法。

・更には、回答選択肢は1~5段階など言った数値(定量値)であるため、項目毎にフリーコメント欄を設け、数値の裏側にある原因や背景を考察する。

こういったことも調査項目の設計段階で、十分検討しておくことが重要になります。

【原因5】ES調査結果を全従業員にフィードバックしていない

調査結果について気にするのは、実施主体である経営層や当該担当部署だけではなく、回答をした従業員も結果を気にしている部分はあると思います。また、従業員へのフィードバックなしに定期的に調査を実施しているとES調査に関する関心がどんどん薄れ、当たり障りの内容で回答してしまい、実態と乖離した意味のない調査結果になりかねません。

よって、調査結果を従業員に毎回フィードバックし、重点的改善項目とその施策を示し、更には、改善活動の結果として調査の経年変化も示して、双方向コミュニケーションする必要があると思います。

また、調査結果に基いて実施する改善活動も、会社側のみで改善出来るものばかりではなく、従業員の協力なくして出来ない改善もあると思うため、全従業員にフィードバックは重要です。

最後に

今回は、ES調査がうまくいかない理由とその対策について述べていきましたが、結局は、、

  ●調査目的の明確化
  ●調査後の取組みも含めた計画性
  ●従業員と会社のための調査とするための双方向コミュニケーションをとること

が調査成功のカギになります。

なお、当社でもES調査サービスをご提供しておりますので、ご興味ご関心ありましたら、こちらより是非ご確認ください。

今回の記事について、何かご不明点等ありましたら、以下よりお気軽にお問い合わせください。

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