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セグメンテーションとは?
セグメンテーションとは、一般的なマーケティング策定プロセス(F.コトラー)の、STP+4Pの策定で最初に実施する分析で、ニーズの同質性を基本軸として、市場に点在する顧客を意味あるグループにまとめることで、マーケティング策定プロセスで最初に行う分析です。
STP+4Pの概要は以下のとおりです。
STPとは、
S:ニーズの同質性を基本軸にグループ化する事で、市場を細分化し(Segmentation:セグメンテーション)
T:細分化された市場の「どこ」をターゲットとするかを決め(Targeting:ターゲティング)
P:ターゲット市場での自社の立ち位置を明確する(Positioing:ポジショニング)
の各々の頭文字をとったもので、これらは、マーケティングの基本戦略(基本方針)です。
STは、大企業と比して経営資源が少ない中小企業にとって、収益性・成長性・実現性の高い市場に資源を集中させるために重要です。
また、Pの”立ち位置”とは、「選ばれる理由」「強み」を指します。
4Pとは、
・製品(Product)
・価格(Price)
・売り場所(Place)
・売り方(Promotion)
の各々の頭文字をとったもので、選択した市場での”立ち位置”を確立させるための戦術、つまり、STPを実現させるための手段です。
セグメンテーションの重要性
市場が成熟期を迎えている現代の日本において、消費者のライフスタイルや趣味・趣向が多様化し、個々のニーズにあった製品・サービスが求められるようになっています。別の見方をすれば、万人を対象とした製品・サービスでは、一定の販売量が見込めなくなってきています。
そのため、一定の販売量が見込めるセグメント(顧客グループ)を発見するためにも、セグメンテーションが必要となります。
また、中小企業が大企業と同様に大きな市場でマーケティングをしても、経営資源の大きさの違いから一定の販売量を得るのはなかなか困難です。
しかし、市場のセグメンテーションを行い、大企業がきめ細かく対応できない特定のセグメントに対して経営資源を集中すれば、成果を出すことは十分可能になってくることから、中小企業にとっては特にセグメンテーションは重要となります。
セグメンテーション方法
①セグメンテーション変数
実際にセグメンテーションする際には、以下のような切り口(変数)を使用します。
<BtoC市場の場合の主なセグメンテーション変数>
<BtoB市場の場合の主なセグメンテーション変数>
上図は、以下のような市場の特徴があるため、セグメンテーション変数が異なってきます。
BtoB市場 | BtoC市場 | |
---|---|---|
市場特性 | 顧客数は限定的で少数 | 顧客数は不特定多数 |
商材知識 (売り手基準) |
同等か相対的に高い | 相対的に低い |
購買目的 | 売上拡大、コスト削減、品質改善などの戦略実現であり、ニーズ(課題)は会社、部署、個人(商材利用者)によって様々 | より良い生活など、情緒的メリットを追求 |
意思決定 | 購買者、使用者、意思決定者などで形成される購買組織が評価・判断し、意思決定までのプロセスが複雑で時間が掛かる | 高額な消費財を除き、基本的に個人が判断 |
②ニーズを起点にセグメント
セグメンテーションは、ニーズを起点に行います。
ニーズには、既に市場(顧客)が認知している顕在ニーズと未だ認知していない潜在ニーズがあるため、顕在ニーズの確認と潜在ニーズの発見・検証を行います。
以下は、顕在ニーズの確認及び潜在ニーズの発見するための、消費・ビジネス動向とマクロ環境要素のメカニズム分析イメージです。
<消費・ビジネス動向とマクロ環境要素のメカニズム分析 イメージ>
上図では、以下のような分析を実施します。
①「トレンド調査結果」や「アンケート調査結果」などで明らかになっている購買傾向や行動等の消費またはビジネス動向の確認します。
②消費・ビジネス動向に影響を与える根源(マクロ環境要素)の把握します。
なお、マクロ環境要素であるPEST要素とは、自社が属する業界(ミクロ環境)などに影響を及ぼすマクロ環境の要素を指します。
PESTの構成要素は以下のとおりです。
P(Politics):政治・法律的要素 (例)時間外労働の上限規制、同一労働同一賃金
E(Economy):経済的要素 (例)物価下落、世帯収入減少
S(Society):社会的要素 (例)少子高齢化、労働力不足
T(Technology):技術的要素 (例)電子マネーの普及、AIの進展
③PEST要素が及ぼすビジネス環境の影響・変化を把握します。
(市場規模の縮小、市場成長率の低下、製品ライフサイクルの短縮等)
④環境の影響・変化が及ぼす、行動・考え方の状態・変化の把握・特定します。
⑤顕在ニーズの確認・潜在ニーズの発見します。
⑥潜在ニーズの有無やその大きさの程度の検証します。
・統計データ等の公知情報
・社内資料
・アンケート調査、インタビュー、観察
などで、検証します。
メカニズム分析というと難しく聞こえますが、現在の消費・ビジネス動向になっている理由を、PEST要素を根源として「なぜ」を繰り返して分析していきます。
ニーズが特定できたら、BtoCならば、このようなニーズをもつ、前述のデモグラフィック変数など各種変数による調査分析を、BtoBならば、このようなニーズをもつ、前述の商材状況変数など各種変数による調査分析を実施し、各セグメントを明確にしていきます。
セグメンテーションの留意事項・要件チェック
セグメンテーションするにあたり、闇雲に細分化しては、次の分析フェーズで有効なターゲティング、さらには市場での自社の立ち位置(ポジショニング)の発見に繋げられません。
そこで、以下のチェックポイント①または②を意識しながら、有効なセグメンテーションかどうか判断します。
これらのチェックポイントを意識してセグメンテーションすることで、無意味な細分化を回避できます。
<チェックポイント①>
①到達可能性 :マーケティング活動が可能であること
②差別化可能性 :マーケティングミックスが異なればその反応も異なり、競合に対して防御可能なこと
③利益獲得可能性:十分な市場規模があり、十分な利益が獲得可能であること
④実行可能性 :市場を惹きつける事が可能であること
⑤測定可能性 ;規模や購買力が測定可能であること(=データが取れること)
⑥定義可能性 :顧客の共通点(ニーズ)が明確であること
<チェックポイント②>
①到達可能性 :マーケティング活動が可能であること
②測定可能性 :規模や購買力が測定可能であること(=データが取れること)
③定義可能性 :顧客の共通点(ニーズ)が明確であること
④意味性 :顧客の共通点(ニーズ)が購買に繋がること
⑤利益獲得可能性:十分な市場規模があり、十分な利益が獲得可能であること
まとめ
●セグメンテーションはマーケティング策定プロセス(STP+4P)の第一ステップ。
●消費者のライフスタイルや趣味・趣向が多様化している現代では、個々のニーズにあった製品・サービスが求められるようになっているため、一定の販売量が見込めるセグメント(顧客グループ)を発見するためにも、セグメンテーションが必要。
●セグメンテーションはニーズを起点に実施し、当該ニーズを持つ属性を、各種セグメンテーション変数を使用して各セグメント像を明確にする。
●「到達可能性」「差別化可能性」「利益獲得可能性」「実行可能性」「測定可能性」「定義可能性」に留意しながらセグメンテーションする。
このように、セグメンテーションはマーケティング策定プロセス(STP+4P)の第一ステップです。
ここで誤った分析をしてしまうと、その後のターゲティング、ポジショニングなどの分析精度に影響が出てきてしまいます。
したがって、細分化の切り口(変数)を考える際にもじっくり時間をかけ、導出した潜在ニーズなどの仮説検証など、何度も繰り返して検討・分析することが大切です。
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